ジャングルトマト

夏のはじめ自宅サロンの庭にトマトの苗を二本植えました。植えて早々、一本は台風並みの雨風でだめになってしまいましたが、もう一本は目を見張る勢いであれよあれよと大きく育ちました。途中、台風に遭い所々茎が折れたものの、その茎を何気なく挿してみたらしっかりと大地に根を張り、親苗に負けじとたくさんのトマトを実らせました。

支柱を立てる、脇芽を摘み取るなどセオリー通りに育てていましたが、そんなことが追いつかないほど勢いよく成長するトマトに、わたしはしばしば自分が「ジャックと豆の木」の豆の木を育てているような気分になるのでした。実際、手のひらサイズのビニルポットに入っていたトマトの苗は、大人の胸のあたりまで高くなり、庭の一角を覆うほど大きく広がっていました。
そんなある日、大型台風がやってきました。トマトの茎は縺れた毛糸のように絡まり、折れたものは茎の繊維が剥き出しになったまま地面を這っています。はっきり言って修正不可能な状態でした。
台風を境に季節は秋に移っていました。トマトのシーズンも終わりです。わたしはもう手をかけないことにしました。自然に任せ、枯れて小さくなったら引き抜けばいい、そう思っていました。ところがトマトは枯れるどころか、それからも実をつけ・・・いいえ、むしろそういう状態になってからの方がたくさんの実を結んでいるから不思議です。
ぐしゃぐしゃのジャングルトマト。絡まった茎のそこかしこから顔を覗かせる赤や青の実は今日も元気に笑っています。